読了目安 8分(2026年9月 全面改訂)
「補助金、うちも使えますか?」。この質問には、いつも質問で返しています。「何に使いたいですか?」。ここで答えが止まる会社は、補助金をもらっても、たいてい使い切れません。この記事では、社員10人の会社が2026年時点で現実に使える補助金を3つ、公募要領の原文をもとに整理し、その前に決めておくべき2つのことを書きます。
補助金は「お金がもらえる制度」ではなく「先に払う制度」
ほとんどの補助金は後払いです。100万円のシステムに補助率2分の1なら、まず100万円を自社で払い、事業を終えて報告書を出したあとに50万円が戻ってきます。しかも、申請書を書く手間、採択後の実績報告、領収書や証憑の管理があります。「タダでもらえるお金」と思って始めると、途中で社長の時間が消えます。
後払いのうえに、もう一つリスクがあります。持続化補助金の公募要領には、基礎審査として「必要な提出資料がすべて提出されていること」など4つの要件が挙げられ、「要件を満たさない場合には、その提案は失格とします」と書いてあります(第20回公募要領 第8版 P.33)。内容を読まれる前に、書類の欠けで終わる。先に払い、書類を揃え、それでも半分は落ちる。この三つを承知のうえで使う制度です。
そして、半分は落ちます。小規模事業者持続化補助金の第19回は、申請16,576件に対して採択7,819件、採択率47.2%でした(中小企業基盤整備機構 2026年7月29日 お知らせ)。落ちる理由は事業ではなく書き方だ、という話は「補助金に落ちる申請書の共通点」に書きました。ここでは、その手前の「何に使うか」に絞ります。
先に決めるのは「使い道」と「やめる条件」
私が最初にお聞きするのは、次の2つだけです。
- 補助金がなくても、その投資をしますか?
- その投資で、誰の作業が何時間減りますか?
1つ目が「しない」なら、補助金があってもやめたほうがいいです。補助金は自己負担をゼロにはしません。2つ目が答えられないなら、投資の中身がまだ固まっていません。逆に、この2つに答えられる会社は、補助金がなくても投資し、補助金があれば少し早く回収できる。それが健全な使い方です。
2つ目の質問が大事な理由は、審査の側もそこを見ているからです。持続化補助金の公募要領にある「審査の観点」には、補助事業計画について「効果は客観的事実に基づいて目標の設定がされており」「事業費の計上・積算が正確・明確で、真に必要な金額が計上されているか」とあります(第20回公募要領 第8版 P.33〜34)。「誰の何時間が減るか」を言えない投資は、社長にとっても審査員にとっても、根拠のない投資です。
10人の会社でよく使われる補助金(2026年9月時点・原文つき)
小規模事業者持続化補助金(一般型・通常枠)。販路開拓の費用が対象で、公募要領には対象経費として「機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費」が挙げられています。補助率は3分の2、補助上限は50万円。インボイス特例なら50万円、賃金引上げ特例なら150万円の上乗せがあります。対象は「小規模事業者」で、商業・サービス業は常時使用する従業員5人以下、宿泊業・娯楽業と製造業その他は20人以下です(同 公募要領 P.4〜7)。第20回の申請締切は2026年12月15日、その前に商工会議所から「事業支援計画書(様式4)」の発行を受ける必要があり、その締切は12月4日です。
デジタル化・AI導入補助金2026(旧・IT導入補助金)。名称が変わっています。会計・受発注・在庫・勤怠などのITツールを導入する費用が対象で、通常枠の補助率は2分の1以内(一定の賃金要件を満たす場合は3分の2以内)、補助額は1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下です。ソフトウェア購入費のほか、クラウド利用料(最大2年分)、導入設定や研修などの役務も対象に含まれます(デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」)。注意点は、事務局に登録された「IT導入支援事業者」と組んで申請する仕組みで、対象のITツールも事前に登録されたものに限られることです。「使いたいソフト」が登録されていなければ、この補助金は使えません。
早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)。これは設備やソフトではなく、「計画を作る費用」の補助です。認定経営革新等支援機関に資金繰り表や経営改善計画の策定を頼む場合、その費用の3分の2(上限80万円)を各都道府県の中小企業活性化協議会が負担します(中小企業基盤整備機構「認定経営革新等支援機関による支援」)。銀行から計画書を求められたときの使い方は「銀行に「計画書を出して」と言われたら最初にやること」に書きました。
制度は毎年変わります。この記事の数字も、来年には変わっているはずです。「どれが使えるか」は、使い道が決まってから、そのとき公開されている公募要領で確認すれば十分です。先に制度を調べて、制度に合わせて使い道を作る順番だと、使う人が決まっていないものを買うことになります。
「補助金ありき」で買ったものは、使われない
もう一つ、数字を挙げておきます。中小企業の52.3%は、デジタル化の「段階2」、つまりExcelなどのツールは使っているが業務効率化までは進んでいない状態です(中小企業庁調査室「2025年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」P.11)。ツールを買うこと自体は、段階を上げません。誰がどの作業で使うかが決まって、初めて上がる。補助金で買えるのはツールであって、使い方ではありません。
だから、最初の2つの質問に戻ります。補助金がなくても投資するか。誰の何時間が減るか。この2つに答えられるなら、補助金は投資の回収を少し早める道具として、堂々と使えばいい。答えられないなら、補助金があっても、まだ買うときではありません。
認定支援機関が入ると変わること
補助金のいくつかは、国が認定した「経営革新等支援機関」が関わることが条件になっていたり、計画策定の費用補助の要件になっていたりします。認定支援機関は、中小企業等経営強化法に基づき、専門知識や実務経験が一定レベル以上の者として国が認定した支援機関です。当事務所はこの認定を受けているため、申請書の作成だけでなく、「そもそもこの投資でいいのか」の整理から一緒に進められます。
ただ、正直に言うと、相談に来られた方の投資が「補助金がなくてもやるべきもの」でない場合、私は補助金を勧めません。申請書を書く手間と社長の時間を、投資が回収してくれないからです。合わないときは、そうお伝えします。それが、売る製品を持っていない立場の唯一の使い道だと思っています。
「使い道はあるが、どの制度が合うか分からない」段階でご相談ください。2つの質問から一緒に整理し、合わなければ、そうお伝えします。
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