銀行に出す計画書は、税理士の決算書と何が違うのか(10人の会社版)

読了目安 8分(2026年9月 全面改訂)

銀行から「事業計画書を出してください」と言われて、税理士の先生に相談したら「それは私の仕事ではない」と言われた。よく聞く話です。決算書と計画書は、見ている方向が逆だからです。この記事では、その違いと、社員10人の会社の計画書がA4 3枚で足りる理由、そして銀行が本当に見ている3つを、公開されている資料をもとに書きます。

決算書は「過去」、計画書は「これから」

決算書は、去年の結果を正確に記録したものです。税理士の先生の仕事は、それを正しく作ること。一方で計画書は、「これから何をして、いくら売って、どう返すか」を書くものです。正しさより、社長の考えが書いてあるかが見られます。税理士が「私の仕事ではない」と言うのは、突き放しているのではなく、正確です。過去の数字の専門家に、未来の数字を頼んでも、根拠のある未来は出てきません。未来の根拠は、社長の頭の中にしかないからです。

銀行が計画書で見ている3つ

銀行が見ている項目は、実は公開されています。全国銀行協会などがまとめた「経営者保証に関するガイドライン」に、経営者保証なしで資金調達を希望する場合に求められる経営状況として、3つが書いてあります(全国銀行協会「経営者保証に関するガイドライン」4〜5ページ)。①法人と経営者との関係の明確な区分・分離、②財務基盤の強化、③財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保。これを、私なりに社員10人の会社の計画書に当てはめると、次の3つになります。

  • 返せるか(②財務基盤):毎月の返済額に対して、利益+減価償却費が上回っているか
  • 根拠があるか(③正確な把握):売上が増える理由が「頑張る」ではなく「この顧客にこれを売る」になっているか
  • 社長が自分で書いたか(③適時適切な開示):説明を求められたとき、社長本人が答えられるか

3つ目が意外と重要です。立派な計画書を業者に作ってもらっても、面談で社長が説明できなければ、銀行は信用しません。ガイドラインの③は、事業計画や業績見通しについて「正確かつ丁寧に信頼性の高い情報を開示・説明する」ことを求めています。説明できない計画書は、開示していないのと同じです。

ついでに書いておくと、銀行の側にも説明する義務があります。金融庁は2023年4月から、金融機関が経営者に保証を求める場合、「どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか」「どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか」を個別具体的に説明するよう求めています(金融庁「経営者保証改革プログラム」事業者向けパンフレット)。計画書を求められたときに「どの部分を見たいのですか」と聞くのは、失礼ではなく、銀行が答える準備をしている質問です。聞いてから書けば、3枚の中身が絞れます。

そして①、会社と社長個人のお金の境目。これは計画書に書く項目ではありませんが、計画書より先に見られます。役員貸付金が決算書に残っている、社長の個人的な支払いを会社の口座から出している。こういう状態なら、計画書の前にそこを整理したほうが早い。詳しくは「銀行に「計画書を出して」と言われたら最初にやること」に書きました。

10人の会社の計画書はA4で3枚あれば足りる

  • 1枚目:今の商売の説明と、困っていること(半ページ)
  • 2枚目:これからやること3つと、それぞれの売上見込み。「この顧客にこれを売る」の形で
  • 3枚目:月ごとの売上・費用・返済の表(12か月分)

40ページの計画書は要りません。銀行の担当者も読む時間がありません。

3枚目の表は、日本政策金融公庫が公開している資金繰り表の様式と同じ考え方で作れます。公庫の様式は「実績1か月+予定3か月」の4列で、行は前月繰越、収入、支出、差引、借入と返済、翌月繰越です(日本政策金融公庫「資金繰り表 記入例」)。しかも様式の冒頭に「この書類に代わる資料を作成されていれば、そちらをご提出いただいてもかまいません」と書いてあります。自分の会社に合った表を12か月分作れば、それが3枚目になります。作り方は「資金繰り表は月1回・A4 1枚でいい」に書きました。

2枚目の「売上見込み」には、計算式をつけてください。「売上を20%伸ばす」ではなく、「月の来店客400人、チラシ1万部で反応率0.5%なら月50人増、客単価3,000円で月15万円、年180万円」。数字の精度は問われません。社長が自分の商売の数字を把握して計算したかどうかが、文章から伝わります。補助金の申請書で同じことを「補助金に落ちる申請書の共通点」に書きましたが、銀行向けでも同じです。

「認定支援機関」が入ると使える制度

自分で書くのが難しい場合、費用の話をしておきます。国が認定した「認定経営革新等支援機関」に計画づくりを頼む場合、その費用の3分の2を各都道府県の中小企業活性化協議会が負担する制度があります。「早期経営改善計画策定支援」、通称バリューアップ支援事業で、上限は80万円です。この制度は、作った計画を「金融機関へ早期に提出することを端緒として」経営を見直すもの、と説明されています(中小企業基盤整備機構「認定経営革新等支援機関による支援」)。返済条件の見直しが必要になる前に、銀行との関係を整えておく目的で使えます。当事務所はこの認定を受けています。

ただし、この制度を使うかどうかは、銀行に「なぜ今、計画書が必要か」を聞いてからで十分です。担当者が代わったから、支店の方針で年に1回まとめているから、という定期的な確認なら、自分で3枚書けば済みます。制度を使うほどの話ではありません。

計画書は、出したあとが本番

最後に一つ。ガイドラインの③には、「開示・説明した後に、事業計画・業績見通し等に変動が生じた場合には、自発的に報告するなど適時適切な情報開示に努める」とあります。計画書は一度出して終わりではなく、計画と実績の差を定期的に報告する会社が評価される仕組みです。

だから、完璧な3枚を半年かけて作るより、粗くても期限までに出して、3か月後に「計画と実績はこう違いました」を1枚持っていくほうが強い。3枚目の表を毎月更新していれば、その1枚は自動的にできます。計画書を「作る」より「出し続ける」ほうが、銀行との関係では効きます。

「銀行に何を出せばいいか分からない」段階でご相談ください。3枚の骨組みを一緒に作ります。認定経営革新等支援機関として、バリューアップ支援事業の申請もお手伝いします。

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