読了目安 8分
この夏、私の事務所のホームページを全面的に作り直しました。この記事は、その経験をもとに書いています。作り直してみて一番感じたのは、デザインや業者選びの前に、社長が自分で決めておかなければならないことが3つあり、それを決めずに発注すると、費用も期間も大きく増える、ということでした。
「ホームページをそろそろ作り直したい」と思っている社長に向けて、発注の前に紙に書いておく3つを、私の事務所の実例つきで書きます。
「持っている」会社は9割。差がつくのは持ち方
総務省の令和6年通信利用動向調査では、自社のホームページを開設している企業の割合は93.2%でした(総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」P.4)。この調査は常用雇用者100人以上の企業が対象なので、社員10人の会社ではもう少し低いでしょうが、それでも「持っていない」ことで困る時代は終わっています。
今は、持っていること自体に価値はなく、「誰が、何を見て、何をするページか」が決まっているかどうかで差がつきます。この3つが、発注前に社長が決めることです。
決めること1 誰が見るページか(1種類に絞る)
作り直す前の私の事務所のページは、「誰向けか」が決まっていませんでした。大企業のIT部門向けの言葉と、中小企業の社長向けの言葉が同じページに並んでいて、月額12.8万円からという料金表が載っていました。どちらの読者にも刺さらない構成でした。
作り直すときに最初に決めたのは、「港区周辺の、社員5〜50人の会社の社長」に絞ることでした。それ以外の読者は捨てる、と決めた。大企業向けの表現と、月額の料金表は全部消しました。この1行を決めた瞬間に、書く言葉も、載せる写真も、ページの数も、自動的に決まっていきました。
「うちはいろんなお客さんがいるから絞れない」という社長は多いです。でも、ページを見に来る人は一人ずつです。一人の読者に「これは自分のことだ」と思ってもらえないページは、全員に読み飛ばされます。絞るのは、読者を減らすためではなく、読んでもらうためです。
決めること2 その人に、何をしてほしいか(1つに絞る)
2つ目は、ページを見た人に取ってほしい行動です。電話してほしいのか、フォームから問い合わせてほしいのか、資料を請求してほしいのか、求人に応募してほしいのか。これも1つに絞ります。
私の事務所では「初回30分の無料相談を申し込む」の1つにしました。すべてのページの最後に、同じボタンが同じ言葉で置いてあります。ボタンの種類を増やすと、読者は選ぶ手間が増えて、結局どれも押さなくなる。1つなら、押すか押さないかだけです。
ここで決めるのは、行動の「種類」だけで足ります。フォームの仕組みや電話番号の置き方は業者が考えられます。ただし「何をしてほしいか」は、業者には決められません。決められないまま発注すると、業者は「お問い合わせ」「資料請求」「採用情報」を全部つけてきます。それは業者が悪いのではなく、こちらが決めていないからです。
ついでに書いておくと、私の事務所の問い合わせフォームは、以前から使っていたMicrosoftのフォームをそのまま使っています。画面の一部に英語の注意書きが残るなど、見た目は完璧ではありません。フォームも新しくするか、という選択肢はありましたが、「何をしてほしいか」は申し込みを受け取ることであって、フォームの見栄えではない。そう決めていたので、そこには手をつけず、公開を優先しました。決めることを1つに絞ると、こういう「やらない判断」も速くなります。
決めること3 古いページと、外に出ている情報をどうするか
3つ目は、意外と忘れられます。作り直すということは、今あるページが消えるということです。古いページのURLを検索エンジンが覚えていたり、名刺やチラシに載っていたりします。消し方を決めておかないと、新しいページを公開した日から「ページが見つかりません」が量産されます。
私の事務所では、古いページは削除せずに非公開にして、古いURLにアクセスがあったら新しいページに自動で転送する設定を入れました。作業としては小さいものですが、業者に頼むなら発注時に言っておく必要があります。あとから言うと追加費用になります。
それから、ホームページの外にある自社の情報も見直します。私の場合は、Googleのビジネスプロフィール(地図検索に出る事務所の情報)を登録しました。港区周辺の社長が「診断士 港区」で検索したときに、ホームページより先に地図が出ることが多いからです。ページを作り直しても、地図の情報が古いままなら、そこで止まります。
「お客様の声」を載せるなら、知っておくこと
作り直すときによく話題になるのが「お客様の声を載せたい」という点です。載せること自体はよいのですが、2023年10月から、広告であることを隠した表示(いわゆるステルスマーケティング)は景品表示法の不当表示にあたるようになりました(消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります」)。
自社のホームページに自社が書く内容は、読む人にとって「会社の表示」だと分かるので、広告であることが分かるという意味では問題になりません(内容が事実と違えば、別の規制に当たります)。気をつけるのは、第三者が自発的に書いたように見せる形です。実際にはこちらが依頼して書いてもらった感想を、お客様が勝手に書いたように載せる。こういう見せ方が、規制の対象になり得ます。載せるなら、誰の言葉で、どういう経緯で載せたかが分かる形にする。細かい判断は個別に確認が要りますが、発注前に「お客様の声はどう集めてどう載せるか」を決めておくと、業者との話が早くなります。
決めずに発注すると、なぜ倍かかるのか
3つを決めずに発注すると、業者は「無難な会社案内」を作ります。会社概要、サービス一覧、お知らせ、お問い合わせ。誰向けでもなく、何をしてほしいかも書いていないページです。納品されてから社長が「なんか違う」と気づき、修正が始まる。修正は追加費用で、期間も延びる。これが「倍かかる」の中身です。
私自身、3つを決めて進めたのに、公開後に本文の中に「ここに文章が入ります」という仮の文字を2か所も残したまま公開してしまい、2回やり直しました。決めるべきことを決めても、最後に自分の目で見る作業は残ります。決めていなければ、その何倍もやり直しが出ます。
発注前に、紙に書く3行
- 誰が見るか:地域・規模・立場を1種類(例:港区周辺、社員5〜50人、社長)
- 何をしてほしいか:行動を1つ(例:初回無料相談を申し込む)
- 古いページと外の情報:転送の有無、地図情報の更新、お客様の声の集め方
この3行を業者に渡してから見積もりを取ると、金額の比較ができるようになります。渡さずに取った見積もりは、業者ごとに作るものが違うので、比べようがありません。以前書いた「IT業者の見積もりで見る3つのこと」は、この3行を渡したあとの話です。
「誰が・何を・どうするか」の3行を一緒に決めたいときは、スポット相談(1万円/60分)で、私の事務所のページを実例にしながらその場で書き上げます。
初回30分 無料相談を申し込むスポット相談 1万円/60分(税別)。営業電話はしません。
