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会計ソフト、勤怠管理、販売管理。社員10人の会社で「そろそろ何か入れよう」となったとき、この3つが候補に挙がります。3つ同時に入れる会社もあれば、業者に勧められた順に入れる会社もある。どちらも、あとで二重入力が残ります。この記事では、10人の会社が入れる順番と、その理由を書きます。
先に結論を言うと、順番は「会計、勤怠、販売管理」です。ただし、3つ目は入れなくていい会社のほうが多い。
売上1千万〜5千万円の会社は、請求書の3割が手書き
まず、同じ規模の会社がどうしているかを見ておきます。日本商工会議所が2024年に行った調査で、請求書などの作成に使うツールを売上高別に聞いています。売上1千万円超〜5千万円以下の会社では、市販のソフトが29.0%、文書作成・表計算ソフトが31.0%、手書きが30.9%と、ほぼ3等分でした。1千万円以下だと、手書きが44.8%で最多です(日本商工会議所「中小企業におけるインボイス制度、電子帳簿保存法、バックオフィス業務の実態調査」P.19)。
同じ調査で、経理事務をどこまで社内でやっているかも聞いています。売上5千万円超〜1億円以下の会社では「仕訳・帳簿作成まで社内で対応」が38.0%で最も多く、「請求書作成と証憑取りまとめまで」が35.1%でした。つまり、この規模の会社の多くは、請求書を作って、仕訳を打つところまでは自分たちでやり、決算と申告は税理士に頼んでいる。
この「請求書を作る」と「仕訳を打つ」の2つが、社内に残っている作業です。システムを入れる順番は、この2つの作業のどちらから減らすかで決まります。
1番目は会計。理由は「税理士との接点」だから
最初に入れるのは会計ソフトです。理由は3つあります。
一つ目は、税理士との接点だからです。決算と申告を外に頼んでいる会社では、毎月か毎四半期、仕訳や証憑を税理士に渡します。ここが紙や手書きだと、税理士側で入力し直すことになり、その手間は顧問料に乗ります。会計ソフトを入れて税理士と同じデータを見る形にすると、渡す作業そのものが消えます。顧問の先生に「どのソフトなら一緒に見られますか」と聞くのが、最初の一歩です。
二つ目は、以前「請求書の電子化、10人の会社はどこから始めるか」で書いた電子帳簿保存法との関係です。受け取った請求書のデータを保存する義務は、すでに始まっています。会計ソフトの多くはこの保存機能を持っているので、会計を入れると、あの記事で書いた「受け取る側の保存」が同時に片づきます。
三つ目は、会計だけは「入れない」という選択肢がないからです。勤怠も販売管理も、規模によっては紙やExcelで足ります。でも帳簿は必ず作らなければならない。どのみち作るものなら、最初にソフトにするのが順当です。
2番目は勤怠。理由は「法律が客観的な記録を求めている」から
2番目は勤怠管理です。これは便利さの話ではなく、法律の話です。
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、始業・終業時刻の確認方法として、原則を2つだけ挙げています。使用者が自ら現認して記録するか、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」か、です(厚生労働省 同ガイドライン P.2)。社員が自分で申告する「自己申告制」は、この2つによれない場合の例外扱いで、使う場合には実態との比較調査などの措置が求められます。
社員10人の会社で、社長が全員の出退勤を毎日現認するのは現実的ではありません。となると、残るのは「客観的な記録」です。紙のタイムカードでも要件は満たせますが、集計は手作業になり、給与計算のたびに数字を打ち直すことになります。ここで二重入力が生まれる。勤怠をソフトにすると、打刻の記録がそのまま給与計算の元データになり、この二重入力が消えます。
もう一つ、出勤簿やタイムカードは労働基準法に基づく保存義務があります。ガイドラインには3年間とありますが、2020年4月の労働基準法改正で原則5年(当分の間は3年)とされています。紙で保存するなら、この期間分の場所が要ります。データなら要りません。
会計より勤怠を後にしているのは、社員が2〜3人のうちは紙でも回るからです。5人を超えたあたりから、集計と保存の手間が目に見えて増えてくる、というのが私の目安です。そのときに入れれば間に合います。
3番目は販売管理。ただし、入れない会社のほうが多い
3番目が販売管理です。見積、受注、納品、請求、入金を一つの流れで管理するソフトです。これを最後にしている理由は、社員10人の会社の多くは「入れなくていい」からです。
月の案件数が数件から十数件で、取引先が固定していて、見積の型が決まっている。こういう会社では、Excelで十分に回ります。私の事務所も、案件の管理は表計算のままです。以前「Excel管理の限界はいつ来るか」で書いた3つのサイン(二重入力・触れる人が1人・最新版が不明)が出ていないからです。
販売管理を入れる合図は、その記事のサインと同じです。見積の数字を請求書にもう一度打っている。受注の一覧を営業と経理が別々に持っている。こういう状態が毎月起きていたら、そのときが入れどきです。逆に、起きていないのに入れると、Excelより手間の増えるソフトを月額で払い続けることになります。
順番を間違えると、二重入力が残る
この順番を逆にすると、何が起きるか。先に販売管理を入れて、会計は手書きのままだと、販売管理で作った請求書の数字を、帳簿に手で転記することになります。先に勤怠を入れて会計がないと、勤怠で集計した給与の数字を、また手で帳簿に打つ。どちらも、システムを入れたのに二重入力が残る形です。
会計が先にあれば、勤怠も販売管理も「会計に流し込む側」として入れられます。会計を土台にする、というのが、この順番の意味です。
入れ替えるときに、データが戻る条件
最後に、一度入れたソフトを別のものに替えるときの話をしておきます。会計も勤怠も、数年使うと「別のソフトに替えたい」という場面が来ます。そのとき、今のソフトからデータが出せるかどうかで、乗り換えの手間が数時間になるか、数か月になるかが決まります。
入れる前に確認するのは、一つだけです。「仕訳や勤怠のデータを、CSVなど汎用の形式で全部出せますか」。出せるなら、いつでも替えられる。出せないなら、そのソフトと長く付き合う覚悟が要ります。「IT業者の見積もりで見る3つのこと」で書いた「やめるときにデータが返ってくるか」は、ソフトを選ぶときも同じです。
順番は会計、勤怠、販売管理。会計は今すぐ、勤怠は社員が5人を超えたら、販売管理は二重入力のサインが出たら。3つ同時に入れる必要はありませんし、3つとも入れる必要もありません。
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